グレートオーシャンロード一人旅

グレートオーシャンロードに行ってきた。初日は仕事が終わってすぐに出発。途中のGeelongという街で夕飯を取ることに。今回の旅はすべてをその場の気分で決めることにしていた。

雰囲気の良い老舗のようなピザ屋に入ってゆっくりと夕食を食べた。メルボルンから離れて田舎になると、お店も空いているしのんびりしていて居心地が良い。最近働き出したであろう女の子が、マネージャー風の男性に見守られながら俺の接客をしてくれた。おどおどしながらも頑張っていた。「これからも頑張ってね」と思ってチップをあげてみた。少しでも励みになれば嬉しい。一期一会。

Geelongを抜けるとすぐにグレートオーシャンロードに入った。(この海岸線を走る道は全長が240kmもある。)しかしいかんせん夜で何も見えない。街灯がまるで無いからだ。オーストラリアのそういうところ、アタシ嫌いじゃないよ…

 

1時間ほど走ると海岸沿いの駐車場があったので、そこに車を停めて降りてみると、空が数え切れないほどの星で満たされていた。それは本当の星空だった。満天の星たちはまるで家の天井のように、すぐそこにあるような錯覚を引き起こす。そしてその真ん中を天の川が横切っていた。

以前グランピアンズという山でも同じようなすごい星空を見た。そのときにも思ったこと。それは去年亡くなった愛犬のこと。俺はそこで彼女の存在を強く感じることができた。遠い遠い彼方で俺を見守ってくれていた。だから俺は彼女に逢いたいと思ったときは、星空の下に行くことにしている。「また逢えたね」と思い、ゆっくりとその時間を噛みしめた。

その日はそのまま彼女のぬくもりを感じながら、星空に包まれて寝た。(公共の場での車中泊は見つかると罰金を取られるんだけど)

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不思議な夢を見た。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の世界に飛び込んだような夢だった。非常に個人的な、家族にも関係することなのでここには書けないけれど。そんな嘘みたいなことが自分の人生に本当に起こるんだな、と驚いた。 

 

翌朝、目を覚ますと目の前には綺麗な夜明けの海が広がっていた。起きるのが憂鬱ではない朝はなんて素晴らしいのだろう。

さらに西へ走り、休憩も挟みつつ目的地である12 Apostlesに着いた。ここはグレートオーシャンロードでも一番有名な場所。波や風による侵食によってできた巨石群。その圧倒的なスケールと海の美しさは本当に言葉にできないものだった。しかし12と言いつつ実際には9つしかないらしい。ちょっと盛っている。

 

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この景色を眺めていたらなんとなく龍安寺の石庭を思い出した。あれもまた非常に独特な日本の美を感じられる所だと思う。日本人は小さく細かい表現に長けている。

日本に変換したり、日本との比較をよくするが、そのたびに自分が日本人であることを痛感させられる。生まれ育った環境や、受けてきた教育というのはなかなか無視できるものではない。これも海外生活で学んでいること。もし自分がまっとうな教育を受けてこなかったとしたら、オーストラリアで粗悪なドラッグにはまって、もしくは大自然の中で不慮の災難によって死んでいただろう。知識というのは本当に生きるための道具だ。

 

その後はグレートオーシャンロードのほぼ西の端、Port Campbellという小さな街で海を眺めながら昼食を取った。一人なのに思わず笑みがこぼれてしまうほどに平和を感じるひとときだった。

そしてエメラルドグリーンの海を眺めながら来た道を引き返し、オーシャンビューのホテルに泊まった。数ヶ月ぶりの湯船(ジャグジー付き)をのぼせるほどに堪能し、またしても天の川をゆっくりと眺めることができた。労働の対価として手に入る金銭の為せる技を噛みしめずにはいられない、とても贅沢な一夜だった。

次の日は翌日からの仕事に備えたかったので、ホテルを出てまっすぐ家に帰ってきた。

 

一人で旅をしていると「ああ、今ここに気の合う仲間や恋人や家族がいれば」と思うことはある。しかし大自然の中で孤独を感じるということはない。それはきっと沢山の生命に包まれているからだと思う。「孤独は雑踏の中にある」とよく言うけれど、それは本当にその通りだ。太陽に照らされ、風に吹かれ、木々は揺れて鳴り、鳥や虫たちの声に包まれているとき、そこにいったいどんな孤独があるというのだ。

今見ているこの素晴らしい景色が、自分の本当の財産になる。そう思わせてくれる場所を探してまた生きていこう。

 

なんだか今日はずいぶんと文章が硬く、これでも推敲なんてものをして書いているのだけど、それは完全に最近Kindleを買って久しぶりに本を読んでいるからだろうな…